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2005年11月21日
[ Books ] 「国家の自縛」 佐藤 優 (産経新聞社)
国家の罠の佐藤氏による、国家、外交について今何を思うかをまとめた一冊。なんというか、恐ろしいほどの情報量。これは、と思ったところに付箋を貼っていったらあっという間に足りなくなった。
日本人と他の国の人との大きな違いは、自分の国に対する愛だ、とよく言われる。氏の国家への強い想いと説得力のある文章から、多少刺激的な考えですらスっと入っていってしまいそうになるのが怖くもあるが、今まさにプーチンの来日や女帝制の導入といったニュースが流れる中、日本の持ってしまった病魔を知り、数々の問題提起によって自国の置かれた現状について理解するという点で、とても意義のある一冊であった。
以下、気になったところメモ。
靖国問題
近代国家が存在する限り、戦没者の顕彰の問題は残るのであって、要はそれを排外主義(ショービニズム)のシンボルにしないことなんです。日本の愛国主義、正当なナショナリズムは排外主義とは縁がない。この伝統を維持することです。千鳥ヶ淵戦没者墓苑でも、一部論者が提案する「非宗教的な国立慰霊施設」にせよ、排外主義のシンボルになれば、再び靖国問題以上に深刻な国際紛争を招くことになりますよ。
北方領土問題対応のおそまつさ(2004年9月2日の小泉首相の北方領土視察について)
六十年前に東京湾のミズーリ艦上で日本が無条件降伏の文書に署名した日で、法律の上では九月二日に第二次世界大戦は終わっている。(中略)ソ連軍は終戦の八月十五日後、九月五日までに北方四島をすべて不法に占拠し、約六十万人とされる日本人をシベリアに強制連行した。この歴史的な「9・2」をせっかく視察日に選んだ以上、小泉さん、あるいは外務省はこの日の意義を協調していかに「法と正義」に反した蛮行であったか、その領土問題の原点を内外にアピールして「スターリン・メッセージ」の撤回も迫ることができたはずなんです。(中略)外務省のロシア課長が視察前にモスクワに飛んで、「いや、今回の領土視察は国会日程の都合で偶然決まったことで他意はありません。ぜひ、ご理解いただきたい」なんて、事前説明をしていたんですよ。なぜ、こんな必要があるんでしょうか。
三つの領土問題(北方領土、尖閣諸島、竹島)という言い方
領土問題と認めたら、それはその領土を手放す第一歩になるんです。(中略)だから、「三つの領土問題」と言ってしまったとたんに中国は大喜びなんですよ。(中略)当時のソ連は「領土問題は存在しない」と言っていたわけなんですね。それに対して日本は「北方領土」の日を作って、これは「領土問題」なんだと言って、できるだけ拳を高く振り上げて、国際舞台でうわーぁと騒いでいったと。そして領土問題として認知させたんです。ところが、尖閣では逆の状況を作られる可能性がある。
上の三つは外交における戦略の部分。「なるほど」の連続。
BSE問題
多国籍軍への自衛隊派遣は憲法の枠を超えてるわけですよ。超えてることを決断したから米国は高く評価したわけですよね。これはメインストリームで憲法とも抵触するような問題で日本はあっさりとそれを呑んだ。ところがBSEのような明らかに枝葉の問題で日本はなんでこんなに頑強なんだろうと。わからないんですよ、日本の論理が米国にも中国にもロシアにも。(中略)ただし残念ながら、国際スタンダードでは米国の交渉文化の方が標準です。ですから日本は負けるんです、このBSE問題では。負ける試合でいつまでもがんばらずに早く兵を引くべきだと私は考えます。
この認識の差はすごく分かる。思考の道筋が理解できないからいつまでたっても平行線。どちらも納得できない。
女帝制について
天皇制の中に部分的に人権というものを入れていくと、しれが内部から壊れていくと思います。そうした場合、日本の国家のあり方が根本的に変容してしまう。(中略)要するに日本の国体論を考える場合、われわれが伝承しているところの皇祖皇宗の伝統をそのままつなげていくことなんですね。そこにおいて、女帝論なんて人権の思想が入ってくるとは何を考えているんだと。皇祖皇宗の伝統が崩れるような改憲をするなら、今のふにゃふにゃの憲法の方がましだ。女帝論の危険性がわかっていない。女帝論とか首相公選制は国体を崩す。こう思いますね。
表面だけ見るのではなくて、そこに至るまでの歴史に何があったのかが大切。ただ、もう少し掘り下げてみないと是非の部分は自分にはいまいちピンとこないところではある。
そうこうしてる間に、どうやら日露首脳会談は北方領土問題に対し具体的進展は得られず、どう考えてもロシアしてやったりの結果で終わったようだ。情報のプロであるプーチンとやりあうだけの基礎体力すら日本にはないということか。
投稿者 kou : 23:59 | Permalink
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